内定における法的な基礎知識

内定とはどういう契約なのか

就職活動において当たり前に使用される言葉の一つに「内定」があります。
言葉の意味としては「内定」は正規採用になる前の採用を前提とした約束という意味のもので、入社日からの労働契約を事前に予約しておくために使用をされます。

内定が出たといっても正式にその企業と労働者の間で労使契約が結ばれたというわけではないので、実際に雇用の契約が結ばれたときに発生する権利や義務の関係は存在していないことになります。

ただし企業側が一旦出した内定を簡単に覆すことを認めてしまうと、労使契約が将来的に発生することを前提に生活を送ってきた学生やその他の求職者にとって著しい不利益になってしまうこともありますので、現在では企業側が求人に応募してきた人に対して出した内定は労使契約に許諾したというふうに取り扱われることになっています。

しかしながら毎年のように「内定取り消し」に関するトラブルはあちこちから聞かれています。
基本的には企業側が一旦出した内定は一方的に取り消すことができないこととはなっているものの、内定から正規雇用までの期間に何らかの不都合な事態が発生したときには採用内定を取り消してもよいとされています。

企業側の内定取り消しが認められる場合

日本の労使契約に関わる法律においては労働者側に強い権利がある場合が多いので、内定取り消しに関してもそれなりに厳しい条件が課されています。

内定取り消しが認められるかという基準は、労働基準法第18条の2にあるような「解雇」に関する項目に準じることになっています。
具体的には「客観的に合理的な理由がある」「社会通念上相当とされる」といったことに当てはまるかどうかです。

具体的に内定取り消しが認められた事例としては「採用活動時に提示された内容に虚偽があった」「留年・落第・健康状態不良により予定日からの勤務が困難になった」ということがあります。

ただしこの理由があるから全て内定取り消しが認められるかというとそういうわけではなく、事情によっては内定取り消しができないということもあるようです。

具体的には採用活動時に提示された内容に虚偽があったという場合であっても、その虚偽が内定決定前から担当者が知ることができるものであったというような場合です。
留年や落第などは予定日からの勤務が決定的に無理になりますので内定取り消しもやむなしという扱いになりますが、健康状態については時間を少しずらすことで勤務が可能になることもあるので、個別の事例ごとに許されるかどうかを判断していくことになります。

反対に求職者側からの内定辞退については比較的ゆるく取扱がされています。
これは日本国憲法における職業選択の自由によるものであり、複数の企業から内定を受けていることを理由に先に受けた内定を辞退しても特に責任はないものとされます。